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第23回プロジェクトチーム(前編)

第22回となる今回はプロジェクトチームについて2回に渡ってお話をする。
プロジェクトマネジャーとともに、プロジェクトチームの善し悪しはプロジェクトの成否に大きな影響を与える。強いプロジェクトチームをいかにして作るかはプロジェクトマネジャーの最大の関心事の一つであり、プロジェクトを成功に導くための重要な要因でもある。
スポーツの世界でもチームの重用性は誰もが認識しており、チームとしての良し悪しが勝敗に大きく影響を与えたケースを挙げるに枚挙にいとまがない。例えば、2010年ワールドカップ南アフリカ大会でフランスチームに起こったことは記憶に新しい。フランスチームはアンリ、リベリー、アネルカなどの超一流プレーヤを擁しワールドカップに臨んだが、ドメネク監督率いるチームの状態は最悪で、監督の求心力はなく、チームの人間関係も悪く、とてもまとまりのあるチームでないまま参戦した。その結果、チームは予選リーグを1勝もできず敗退し南アフリカを早々に去ることになった。逆に、日本は個々の選手のレベルはそれほど高くはなかったが、チームの結束は強く、予選リーグを突破し決勝リーグまで勝ち進んだ。プロジェクトチームも同様である。個々のチームメンバーが一体となってプロジェクトの成功に向かって取り組んでいるのか、チームはバラバラでメンバーは自分の役割しか考えないでプロジェクトに取り組んでいるかで、プロジェクト成果の観点から大きな違いを生むことは必定であろう。

グループとチーム

プロジェクトにおいて、「プロジェクトチーム」とは呼ぶが「プロジェクトグループ」とは呼ばない。野球もサッカーも「野球グループ」「サッカーグループ」は存在せず、「野球チーム」「サッカーチーム」しか存在しない。つまり、プロジェクトのような目的とゴールが明確な活動は、チームで対応するのが常識ということであるが、果たしてどのプロジェクトもチームとして活動ができているのだろうか?
過去、多くの企業で様々なプロジェクトを見てきたが、中にはチームではなく、ただのグループのようにプロジェクトを進めているものもあった。あるプロジェクトでは、プロジェクトに対するメンバーの責任感も希薄で、自分の担当の分はしっかりやるが、プロジェクトの成果は自分には関係なくプロジェクトマネジャー(又はプロジェクトリーダー)の責任だと割り切って仕事をやっていた。また、プロジェクト組織として構成はされているが、メンバーの顔もわからずほとんどプロジェクトメンバー間のコミュニケーションも希薄で進めているようなプロジェクトもあった。
チームとはいったいどういうものなのか、またどうあらねばならないのかを先ず理解しないとプロジェクトチームとしての活動はおぼつかないように思える。グループとチームについて明確な定義は見当たらないが、おおよそ次のように定義されている。

【グループ】 特定の目的を達成するために集まった集団
【チーム】  特定の目的を達成するために集まり、思いを一つにして、お互いに影響を与えながら目的を達成するために進んでいける集団

この定義からすると、何かの目的で集まった集団であることはグループもチームも同じであるが、チームは物理的な集まりを超えて、精神的な部分も共有し、お互いが影響を及ぼしあいながら成果を出す生き物のような躍動感が漂う。
下図にグループとチームにおけるメンバーの関係を示す。

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これからイメージできるように、グループの場合はコミュニケーションの主体はリーダーとメンバーの間が中心であり、リーダーシップは全てリーダーに依存している状態となっている。メンバーに自主性はなく、リーダーの指示や依頼に基づいて動くという状況になっており、メンバー間のコミュニケーションは希薄である。
一方、チームにおけるコミュニケーションはリーダーとメンバー間だけでなく、メンバー間のコミュニケーションも活発で、それぞれのメンバーがリーダーシップを発揮し、他のメンバーに影響を及ぼしあっている状態となる。当然、このチームの状態がプロジェクトして好ましく、成果を出しやすいが、グループ的なコミュニケーションにとどまっているプロジェクト組織は意外と多いのではないだろうか。

チームのレベル

それでは、最高のチームの状態とはどうなっているのだろうか。チームにも様々なレベルが存在し、低いレベルのチームもあれば高いレベルのチームも存在する。当然、レベルの高いチームの方がチームとして一体感・連帯感は高く、シナジーも働きやすくプロジェクトの成果も出しやすい。特にリスクの高いプロジェクトほど、チームのレベルは高くありたいものである。下記にチームの状態をもとに7つのチームレベルとともに、そのレベルにおいて心がけるべきことを簡単に示した。

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これからわかるように、レベルが高くなるにつれメンバー間の意識の共有レベルは高くなり、相手を表面的なことだけでなく内面的なことまで理解できるようになり、チームとしてのシナジーが高まっていく。 チームが一体感を持つには、チーム内の深いコミュニケーションと信頼が不可欠であり、チームメンバーがハイコンテキストの中で活動できる状態を作り出さなくてはならない。コミュニケーションが不足したままで、強いチームを作ることは不可能であり、プロジェクトにおいて成果を出すためにはコミュニケーションへの投資も必要となってくる。

後編では、チームのライフサイクルや、メンバーの構成・役割についてお話をする。